このページの要点
- 配信報酬はライバーが直接受け取り事務所は控除しない、代理店報酬は分配の対象外、と区別して書く。
- 企業案件では、事務所が発注者か仲介者かを示し、報酬の支払義務者を個別条件に明記する。
- プラットフォームのペナルティは、事由と算定根拠の説明を受けたうえで自己の責めに帰すべき範囲だけを負担する。
- 期間中の制限は登録の重複を防ぐ範囲に限り、終了後は登録解除の申請期限を決める。
結論:ライバーとの契約では「誰からいくら入り、事務所の取り分はどこから出るか」を最初に書く
ライブ配信アプリの中には、公式に認められた代理店(エージェンシー)の制度を持つものがあります。ライバー事務所の多くは、こうした代理店、又はその下で活動する二次代理店として、ライバーをプラットフォームに登録し、育成や配信の支援をしています。このとき、ライバーとの契約で最初に決めるべきなのは、配信で得た収益(投げ銭・ギフトなど)が誰の口座に入るのか、事務所の取り分はライバーの収益から差し引くのか、それとも上位の代理店やプラットフォームから別に支払われるのかという、お金の流れです。
事務所の書類を見ると、プラットフォームからライバーに配信の報酬が直接支払われ、事務所はライバーの収益を分配せず、上位から受け取る代理店報酬で運営する、という仕組みが典型です。それにもかかわらず、ライバーとの契約書が芸能事務所の分配型の書式を流用していると、事務所がライバーの収益の何%を受け取るのかが書かれ、実際のお金の流れと契約書が食い違います。代理店どうしの契約(本部と代理店の関係)は扱わず、このページでは、ライバー事務所とライバーの契約、事務所のスタッフとの契約を中心に整理します。分配型の報酬の書き方は報酬分配のページをご覧ください。
お金の流れを図にしてから、条文を書く
二次代理店であるライバー事務所の既存の契約書に逐条でコメントした案件では、プラットフォームからライバーが直接受け取る配信報酬の扱いは整理されていた一方で、事務所が一次代理店などから受け取る代理店報酬の扱いが書かれていない、と指摘しました。また、企業からの案件(企業案件)で、事務所が発注者なのか、仲介者なのか、代金を預かって渡す収納代行者なのかが分からない点も挙げています。
ライブ配信の収益の流れ(典型的な形)
- 視聴者ギフト・投げ銭などでプラットフォームに支払う
- プラットフォームライバーに配信の報酬を支払い、代理店には代理店報酬を支払う
- 一次代理店代理店報酬の一部を二次代理店(ライバー事務所)に分配する
- ライバー事務所代理店報酬で運営し、ライバーの配信報酬からは控除しない
- ライバー配信の報酬をプラットフォームから直接受け取る
代理店の制度や報酬の算定方法は、プラットフォームごと、代理店ごとに異なります。契約書には、実際の流れを確かめたうえで書きます。
事務所が全面的に改訂した契約書では、この流れに合わせて次のように定めました。
配信報酬と代理店報酬の区別(改訂例の要旨)
1乙がプラットフォームから受け取る配信の報酬は、乙が直接受領し、甲はこれから控除しない。
2甲が一次代理店その他の第三者から受け取る代理店報酬は、乙の配信の報酬から控除されるものではなく、乙への分配の対象ともならない。
3甲が企業案件その他の個別案件を仲介するにとどまるときは、報酬の支払義務者を個別条件に明記する。
第2項は、事務所の取り分がライバーの収益を減らすものではないことと、事務所の代理店報酬をライバーが請求できないことを、同時に明らかにする条です。
第3項の企業案件の書き分けは、ライバーにとって重要です。事務所が発注者として案件を受け、ライバーに再委託するなら、事務所がライバーに報酬を支払う義務を負います。事務所が仲介するだけなら、報酬の支払義務者は企業で、未払いのときに請求する相手も企業になります。事務所が発注者になる場合、ライバーが従業員を使用しない個人であれば、事務所の従業員の有無にかかわらず、その案件はフリーランス法の業務委託に当たり得ます。その場合、事務所は案件をライバーに任せたらすぐに、何をしてもらうのか、報酬はいくらで、いつ払うのかといった条件を、書面やメッセージなどで伝える義務を負います(フリーランス法3条1項)。事務所が仲介するだけなら、事務所はその案件の委託者ではありませんが、ライバーから見て誰が委託者なのかが分からないこと自体が紛争の種になります。どちらの立場で関わるのかを案件ごとに示すことは、法律上の義務の有無にかかわらず必要です。
同じ改訂版では、個別案件ごとに、発注者・広告主・契約当事者、媒体と掲載期間、報酬と支払期日、控除額、検査の基準、肖像等の利用条件、キャンセルの条件などを、業務の開始前に提示することにしています(起用・出演・PR案件のページ)。
プラットフォームのペナルティと、管理システムの数値
ライブ配信の代理店制度では、プラットフォームの規約違反に対して、報酬の取消しや制裁金などのペナルティが代理店に課されることがあります。一次代理店側の依頼者のヒヤリングでは、プランによってペナルティの負担者を変える(代理店が全額を負担し代理店報酬から控除する型、全体の報酬から控除した後にロイヤリティを計算する型)こと、引抜きや所属要件の違反による罰金はプランを問わず代理店が負担することが回答されていました。
問題は、このペナルティが、事務所の段階でライバーに転嫁されるときです。ライバー事務所の改訂版では、ライバーの責めに帰すべき事由による報酬の取消しや制裁金について、ライバーは、事由と算定の根拠について事務所から説明を受けたうえで、自己の責めに帰すべき範囲を負担する、と定めました。事務所に課されたペナルティを、原因や計算の説明なしにライバーの報酬から差し引くことはできない、という建て付けです。
書き換えの方向 プラットフォームのペナルティの負担
ペナルティの転嫁
「乙の活動に関するもの」では、他のライバーの違反や事務所自身の違反まで含まれるおそれがあります。帰責の範囲と説明の手順を条件にします。
もう一つの論点が、管理システムの数値です。代理店の契約書には、「管理システムにおいて表示される数値は、最終的かつ拘束力を有する」とする条や、一次代理店が示すデータに基づいて算定し、明らかな誤りがある場合は協議して修正する、とする条がありました。プラットフォームや一次代理店のデータに頼らざるを得ない構造である以上、数値の拘束力を認めること自体は避けられません。ただ、ライバーとの契約では、事務所がライバーに示す数値の根拠(どの画面の、いつ時点の数値か)を明らかにし、明らかな誤りがあれば訂正できる道を残しておくべきです。
所属登録、ID の変更、契約上の地位の移転
ライバーが事務所に所属するには、プラットフォームの上で事務所(代理店)の管理下に登録されるのが通常です。逐条コメントでは、事務所が一次代理店の判断を理由に退所を無期限に保留するリスクを指摘し、改訂版では、契約終了の効力発生日から原則として5営業日以内に一次代理店へ登録解除を申請し、遅れるときは理由と見込みの時期をライバーに説明する、と定めました。退所の手続は退所・契約終了後のページで詳しく扱います。
ライバーのIDの変更も、意外に大きな論点です。一次代理店側の契約書の修正版では、所属ライバーのIDを変更するときは事前に、又は直ちに申請すること、無断で変更すると管理システムの対象から外れ、代理店報酬の算定の対象外になり得ることを追加しました。ライバーとの契約でも、IDの変更が事務所の報酬や所属の扱いに影響することを伝え、変更の前に連絡する条を置いておくと、行き違いを防げます。
事務所が別の事業者に事業を引き継ぐ場合もあります。逐条コメントでは、契約上の地位の移転は単なる業務の再委託より重大な効果を持つと指摘し、改訂版では、地位の移転を合併・会社分割・事業譲渡の場合に限り、承継人が義務を引き継ぐこと、事前に通知すること、ライバーに解約権を認めること、一次代理店との提携だけでは地位が移転しないことを定めました。ライバーにとって、どの事務所に所属するかは、誰に自分の活動を支援してもらうかという、人を選ぶ判断です。事務所が知らないうちに別の会社に替わっていた、という事態を防ぐために、移転の場面を限り、事前の通知と、納得できないときに契約を終わらせる道を用意しておく、という考え方です。
期間中の制限は、登録の重複を防ぐ範囲にとどめる
ライバー事務所の契約で、専属性の中身として本当に必要なのは何かを考えると、多くの場合は「同じプラットフォームで、別の代理店の管理下に重ねて登録しない」ことに尽きます。代理店制度では、一人のライバーが複数の代理店に重ねて登録されると、どの代理店の実績として扱うかが決まらないからです。
事務所が全面的に改訂した契約書では、この点を次のように整理しました。
- 期間中の重複登録の禁止は、エージェンシー登録の重複を防止するために必要な範囲に限る。
- 期間中であっても、ライバーは将来の移籍や独立について第三者と相談・交渉することができる。
- 契約が終了した後は、ライバーは事務所の承諾なく移籍・独立でき、事務所は退所金、移籍金、違約金又は育成費用の返還を請求しない。
- 事務所が紹介した案件の取引先とライバーが直接取引することの禁止(いわゆる中抜きの禁止)は、契約終了後6か月間、当該案件に限り、紹介の前から取引のあった相手は除く。
第2号は、芸能分野の指針が、契約上、契約期間中に他の事務所と移籍の交渉を行うことを禁じることを、移籍・独立を妨害する行為の一つとして挙げていることと対応しています。第4号は、事務所が紹介した案件の成果を守る必要と、ライバーの活動の自由との釣り合いをとったものです。終了後の制限と違約金の考え方は移籍制限・違約金のページで詳しく扱います。
一次代理店側の依頼者のヒヤリングでは、ライバーの退会はプラットフォームの定める方式で行い、原則として契約期間を全うするよう働きかけること、希望があれば本部の事務所へ移籍できることが回答されていました。代理店の側の運用として契約期間の満了を促すことと、ライバーとの契約で退所そのものを妨げることは別の話です。ライバーとの契約書には、退所の申出の方法と、登録解除までの期限をはっきり書いておきます。
ライバーとの契約書の主な条項(事務所が全面的に改訂した契約書の構成から)
| 条項 | 定めた内容 |
|---|---|
| 目的・当事者 | プラットフォーム・一次代理店・広告主は当事者でないことを確認する |
| 業務の性質 | 準委任を基本とし、活動の日時・頻度・内容はライバーが決める。案件の諾否は自由 |
| 登録の重複 | 重複登録の禁止は必要な範囲に限り、期間中の移籍の相談を妨げない |
| アカウント | ライバーが管理・利用の主体。正式な管理機能以外でパスワードを求めない |
| 個別案件 | 発注者・媒体・報酬・控除額・肖像等の利用条件などを開始前に提示し、承諾で成立 |
| 報酬 | 配信報酬はライバーが直接受領し控除しない。代理店報酬は分配の対象外 |
| 肖像等 | 期間中・必要範囲・無償・非独占で許諾し、発言を歪曲する編集はしない |
| 相談・申告 | 専門家への開示、法令違反の申告を妨げない。ハラスメントの相談体制 |
| 期間・解除 | 1年の自動更新、30日前の解約。一時停止の手続と確定報酬の支払 |
| 終了時 | 登録解除の申請期限、現在の所属表示の削除、地位の移転の限定 |
ライバー事務所のスタッフとの業務委託
ライバー事務所では、ライバーの配信を支える運営担当のスタッフを業務委託で使うことも多く、事務所が作成した業務委託契約書があります。ライバーとの契約とは別の論点が並びます。
運営担当スタッフとの業務委託契約で決めたこと
| 論点 | 契約書での扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 成果報酬 | 担当ライバーの実績に連動し、最初の2か月間は50%、3か月目以降は30%とする | 対象外となる場合の列挙が広すぎると、発生済みの報酬の不払いにつながる |
| 会議・連絡 | 毎週の定例ミーティングへの参加、日中の連絡が取れるよう努める条 | スタッフの労働者性の観点から、時間の拘束と読める書き方を避ける |
| 生成AIの利用 | ライバー情報・顧客情報を生成AIに入力しない。返信文の作成に使う場合も個人情報を入れず、出力を自ら確認する | 外部のサービスに入力した情報の扱いは、事務所の管理の外に出る |
| ライバーとの私的な関係 | ライバーとの個人的な契約や金銭の貸し借りを禁止する | スタッフとライバーの間の金銭トラブルが事務所の信用に直結する |
成果報酬の条で注意したいのは、「その他甲が成果報酬の対象とすることが適当でないと合理的に判断したとき」のような包括的な除外事由です。発生済みの報酬まで不払いにできる書き方は、スタッフから見ると、いつ報酬がなくなるのか分かりません。除外事由は、不正な水増しや規約違反のように具体的に列挙するのが基本です。
生成AIの利用の条は、運営担当のスタッフがライバーへの連絡文やファンへの返信の下書きに生成AIを使うことを想定したものです。ライバーの本名や連絡先、売上の数字、ファンの個人情報を外部のAIサービスに入力すると、その情報は事務所の管理の外に出てしまいます。使うこと自体を禁止するのではなく、入力してよい情報と、出力を自分で確認してから送る手順を決めておく、という書き方にしたのは、現場の効率と情報の管理の釣り合いをとるためです。
紹介者やスカウトの報酬にも、似た論点があります。紹介したクリエイターに係る収益の一定割合を紹介者に支払う契約、事務所が当該ライバーから得る利益の一定割合をスカウトに支払う契約では、「収益」「利益」が何を指すのか(一次代理店から事務所に分配される額か、事務所の純利益か)と、報酬がいつまで続くのかを、定義の条で決めておく必要があります。内部の会計で確定するとだけ書くと、受け取る側は金額を確かめる手段がありません。
紹介・スカウト・運営担当の報酬の母数(事務所の書類から)
| 契約 | 報酬の決め方 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 紹介者との業務提携 | 紹介したクリエイターに係る収益の10%。収益は一次代理店から事務所に分配される額 | 一次代理店のデータに明らかな誤りがあったときの修正の手順 |
| スカウトとの業務委託 | 事務所が当該ライバーから得る利益の原則30%。各月の純利益を基礎に内部会計で確定 | 純利益の算定に入れる費用の範囲と、確認の方法 |
| 運営担当スタッフ | 担当ライバーの実績に連動し、最初の2か月50%、3か月目以降30% | 担当の交代や、ライバーの退所後の扱い |
どの契約でも、報酬がいつまで続くのか(ライバーが在籍する間か、一定期間か、契約の終了までか)を書いておかないと、契約が終わった後の請求をめぐって争いになります。
未成年のライバーと、プラットフォームの年齢の条件
ライバーには18歳未満の方もいます。未成年者が契約を結ぶには法定代理人の同意を得る必要があり、同意を欠く契約は後から取り消される可能性があります(民法5条1項・2項)。ライバー事務所の改訂版では、未成年のライバーについて法定代理人の同意を契約の前提とし、署名欄に法定代理人の欄を設けました。あわせて、プラットフォームが未成年の利用や収益化を禁止している場合はライバー活動を行わない、と定めています。プラットフォームの規約が年齢で利用を制限していれば、事務所との契約だけ整えても活動できないからです(未成年・練習生のページ)。
芸能分野の指針も、実演家が若年層の場合には、契約内容を十分に理解しないまま契約する傾向があることを指摘し、若年であることによる特段の配慮が必要で、指針の行動指針に沿って対応することが特に重要だとしています。ライブ配信では、スマートフォン一つで活動を始められる分、保護者が契約の存在を知らないまま事務所に所属している例も考えられます。法定代理人の同意を、署名欄だけでなく、同意した日と連絡先の記録まで含めて残しておくのが実務的です。
ライバー事務所の契約で起きがちなこと
よくあるご質問
投げ銭(ギフト)の収益は、誰の口座に入りますか?
代理店制度のあるライブ配信アプリでは、プラットフォームからライバーに配信の報酬が直接支払われ、事務所は上位から代理店報酬を受け取る形が典型です。ただし制度はプラットフォームや代理店ごとに異なるため、契約書で、配信報酬をライバーが直接受け取り事務所は控除しないのかどうかを確認してください。
事務所の取り分は、どこから出ているのですか?
典型的には、プラットフォームから一次代理店、一次代理店から二次代理店(ライバー事務所)へと支払われる代理店報酬です。改訂例では、代理店報酬はライバーの配信報酬から控除されるものではなく、ライバーへの分配の対象にもならない、と明記しました。
プラットフォームの罰金は、ライバーが払うのですか?
契約しだいですが、改訂例では、ライバーの責めに帰すべき事由による取消しや制裁金について、事由と算定根拠の説明を受けたうえで、自己の責めに帰すべき範囲だけを負担するとしました。事務所に課されたものを無条件に転嫁する書き方は避けるべきです。
企業案件の報酬が支払われないとき、誰に請求しますか?
事務所が発注者としてライバーに再委託しているなら事務所に、事務所が仲介するだけなら企業に請求するのが原則です。改訂例では、事務所が仲介にとどまるときは報酬の支払義務者を個別条件に明記することにしています。
事務所を辞めたのに、所属の登録が外れません。
改訂例では、契約終了の効力発生日から原則として5営業日以内に一次代理店へ登録解除を申請し、遅れるときは理由と見込みの時期を説明する、と定めました。契約書に登録解除の期限がない場合は、退所の際に覚書で期限を決めておくと安心です。
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