契約期間・自動更新・中途解約・解除の手続

期間は合意で明確に、更新は止められるように、解除と措置には双方について手続を置きます。

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満了の6か月前までに通知しなければ自動更新、という条では、半年先の見通しを立てなければ辞める判断ができません。

このページの要点

  • 芸能分野の指針は、期間を合意で明確に定め、更新を重ねた実演家を当初と同じ長期で機械的に更新しないことを求めている。
  • オーディションの延長条項は特定の公演の終了までに限る。事務所の請求で一方的に延ばす期間延長請求権は例外的にしか許容されない。
  • 中途解約の予告期間は双方で同じにし、履行中の案件はその終了まで務める形で調整する。
  • フリーランス法の適用がある6か月以上の契約は、解除・不更新に30日前の予告と、求めがあれば理由の開示が必要。

結論:期間は合意で明確に、更新は止められるように、解除と措置には手続を置く

マネジメント契約の期間の条は、タレントにとっては「いつ辞められるか」、事務所にとっては「いつまで投資を回収できるか」を決める条です。事務所が作成・レビューしてきた契約書では、1年から5年までの期間に、1年又は同じ期間の自動更新を組み合わせる型がほとんどでした。この条を作るときの要点は、①期間を明確にし、その長さを双方の合意で決めること、②自動更新を止める方法と期限をはっきり書くこと、③途中で辞める道(中途解約)と、違反があったときの解除・措置の手続を、双方について書くことの三つです。

芸能分野の指針は、専属義務の期間を一定期間確保する必要がある場合はあらかじめ契約上明確に規定すること、期間は実演家の要望も踏まえて双方の合意で定め、実演家が短い期間を求めるときは、育成等の費用を合理的な範囲で回収し収益を確保するために必要な期間について十分に説明し協議することを求めています。契約期間を定めない場合は、実演家が希望するタイミングで退所を認めるべきだともしています。指針が紹介する実態調査では、期間を定めている事務所の約8割が2年以内の期間とし、約4割の事務所が「契約期間はない」としていました。

このページでは、期間と更新の書き方、オーディションの延長条項と期間延長請求権、タレントの側の中途解約、事務所の側の解除とフリーランス法の予告、解除事由と措置の手続、不可抗力を順に見ていきます。退所の後の処理は退所・契約終了後のページ、終了後の活動制限は移籍制限・違約金のページで扱います。

期間と自動更新の書き方

事務所の書類に現れた期間と更新の組み合わせは、次のとおりです。

期間・自動更新・更新拒絶の期限(事務所の書類から)

書類当初の期間自動更新更新しない旨の通知の期限
芸能プロダクションの所属契約書2年1年ごと満了の60日前
専属マネジメント契約書2年1年ごと満了の3か月前
ライブ配信事務所のライバー業務委託契約書6か月6か月ごと満了の1か月前
練習生育成事務所の専属契約書・タレント専属契約書1年1年ごと満了の3か月前
専属マネジメントの利用規約1年1年ごと満了の1か月前
配信プロダクションの所属契約書1年1年ごと満了の2か月前
ネット活動の支援会社との業務提携契約書5年1年ごと満了の6か月前
ライバー事務所の改訂版1年1年ごと30日前の解約を認める

当初の期間と更新の期間を同じにする型と、更新の期間を当初より短くする型があります。

指針は、更新の期間についても考え方を示しています。何度も更新を重ね、すでに育成等の費用の回収や合理的な範囲の収益の確保が終わっていると考えられる実演家について、実演家の意思に反して、更新で延長する期間を当初の育成段階のような長期にすることは、実演家を不当に拘束し得るとしています。参考となる行動例として、更新後の契約期間を当初の期間より短くしている例が挙げられ、問題となり得る例として、在籍期間にかかわらず十分に協議しないまま機械的に当初と同じ期間で更新すること、入所するすべての実演家と協議なく長期の期間を定めるひな形を一律に使うことが挙げられています。

更新しない旨の通知の期限も、長すぎると実質的に辞める機会を狭めます。満了の6か月前までに通知しなければ自動的に更新される、という条では、タレントは半年先の活動の見通しを立てて判断しなければなりません。指針は、契約更新時に契約内容の説明や協議を一切せず自動更新し続けることも、問題を誘発する原因となり得る行動例に挙げています。更新の前に事務所から条件の確認の連絡をする、という手順を契約に書いておくと、自動更新を続けながらも、更新のたびに条件を見直す機会を作れます。

一方、期間を定めない契約にも落とし穴があります。指針は、契約期間を定めていないのに、実演家が退所を希望した際に事務所がこれを認めないことになれば、実演家は契約時に予期できなかった困難に直面するとして、期間を定めていない事務所は、実演家が退所を希望すれば認めるべきだとしています。参考となる例として、期間は定めていないが、実演家が退所を希望すればいつでも退所できるようにしている例が、問題となり得る例として、期間を定めていないのに事務所が合意しない限り退所を認めない例が挙げられています。期間を定めないなら、解約の予告期間と手続を明記し、いつでも辞められることを契約書の上でも分かるようにしておきます。

指針の実態調査では、約3割の事務所が契約期間(自動更新の有無)を実演家に明示的に説明していないとしていたことも紹介されています。期間は契約の中で最も重要な事項の一つです。契約書に書くだけでなく、締結の時点で、期間・更新・解約の方法を口頭でも説明し、説明したことを記録に残しておくと、後から「聞いていない」という争いを防げます。

期間と更新(設計の例)

1本契約の期間は、締結日から2年間とする。

2期間満了の60日前までにいずれの当事者からも更新しない旨の通知がないときは、本契約は1年間更新され、以後も同様とする。

3甲は、期間満了の90日前までに、乙に対し、更新後の条件(分配率その他の重要な条件を含む。)を示し、乙の意向を確認する。

4甲は、乙の意思に反して、本契約の期間を一方的に延長してはならない。

第4項は、ライバー事務所の改訂版で置いた条です。オーディションの延長条項のように期間を延ばす条を別に置く場合は、その条との関係を書き分けます。

オーディションの延長条項と、期間延長請求権

芸能プロダクションの所属契約書では、修正版の段階で、オーディションへのエントリーの時点で所属しており、そのオーディションに合格して公演などへの出演が決まった場合には、契約期間の満了日や更新の時期を超えるときでも、その公演などの全日程が終わるまで引き続き所属する、という条を追加しました。オーディションは事務所を通じて応募し、合格後の出演契約も事務所が窓口となって進めるため、途中で所属が切れると、出演の契約関係が宙に浮いてしまうという実務上の事情からです。

この延長は、タレントの合格という事実を条件に、決まった公演の終了までという限られた範囲で期間を延ばすものです。これに対し、指針が厳しい目を向けているのが「期間延長請求権」、つまり事務所からの請求で契約を更新できる権利です。指針は、期間延長請求権を規定するなら、育成等の費用の回収と合理的な範囲での収益の確保の必要性が認められる場合に、1回に限るなど合理的な範囲で行使できるものとし、契約の段階で必要性や行使できる範囲を十分に説明・協議すること、行使するときは金銭的な補償で代替できないかを検討することを求めています。移籍・独立のけん制や引き抜きの防止は、行使の合理的な目的とは認め難いとしています。

期間を延ばす条の比較

オーディションの延長条項

  • 合格・出演決定という事実が条件
  • 延長は決まった公演の全日程の終了まで
  • 出演の契約関係を途切れさせないための条
  • 対象の公演を特定し、他の活動には及ばないと書く

期間延長請求権

  • 事務所の請求で一方的に更新する
  • 指針は例外的にしか許容されないとする
  • 置くなら1回限り・必要な期間・理由の説明
  • 金銭的な補償で代替できないかを検討する

オーディションの延長条項を置く場合も、延長の期間中の分配やタレントの解約の可否を書いておくと、延長が拘束の手段と受け取られにくくなります。

タレントの側の中途解約:予告期間の長さと、非対称

声優VTuberのプロジェクトの業務委託契約書のレビューでは、演者が途中で辞めるには6か月前の予告が必要とする条について、民法651条や90条との関係で、予告期間が短縮されたり無効とされたりするリスクがあると指摘しました。民法651条1項は、委任は各当事者がいつでも解除できると定め、準委任にも準用されます(民法656条)。やむを得ない事由がないのに相手方に不利な時期に解除したときなどは損害を賠償しなければなりませんが(651条2項)、解除そのものを長期間封じる定めは効力を争われる余地があります。報告書は、運営の側にだけ予告期間を短くできる救済が用意されていて、双方の扱いが非対称になっている点も指摘しています。

個人でVTuberとして活動する方のレビューでは、事務所の契約書に依頼者の側から解除する規定がまったくなかったため、任意の解除権、その予告期間、やむを得ない事情があるときの解除を加えるよう提案しました。芸能プロダクションのタレント専属契約書の中には、合意解約しか認めず、双方の署名押印のある書面によるとする型もありました。立ち上げ期の事務所のヒヤリングシートでは、「辞めさせない」設計は労働者性、公序良俗、公正取引委員会の動向のいずれにも反し、執行もできない、と注記しています。

書き換えの方向 中途解約の条

タレントからの解約

よく見られる書き方乙は、6か月前までに甲に申し出ることにより、本契約を解約することができる。甲は、必要と認めるときは予告期間を短縮できる。
書き換えの例各当事者は、30日前までに相手方に通知することにより、本契約を解約することができる。解約の時点で履行中の個別案件は、別段の合意がない限り、その案件の終了まで本契約の定めに従う。

予告期間を双方で同じにし、履行中の案件の扱いを決めることで、取引先への影響を抑えながら、辞める道を確保します。ライバー事務所の改訂版で採った形です。

履行中の案件を存続させる条は、タレントの側の解約で取引先に迷惑がかかる事態を防ぐための、事務所にとっての安全弁です。予告期間を長くして辞めにくくするより、案件の単位で責任を果たしてもらう方が、紛争になりにくい設計です。育成の費用を回収する必要があるなら、予告期間ではなく、実費の精算の条で手当てします(移籍制限・違約金のページ)。

民法651条2項は、相手方に不利な時期に解除した場合などに損害賠償の義務を定めています。芸能の仕事でいえば、公演の直前や、撮影の日程が決まった後に一方的に辞めて代わりの手配ができない場合などが、不利な時期の典型です。契約書で、解約の効力が生じる時点で履行中の案件は終了まで務める、と定めておけば、こうした場面の多くは、損害賠償の問題になる前に解決できます。逆に、事務所の側も、タレントが案件に向けて準備を重ねている時期に一方的に契約を終わらせれば、同じ規定の問題が生じ得ます。

事務所の側の解除:フリーランス法の30日前の予告と理由の開示

事務所の側から契約を終わらせる場面では、フリーランス法に注意が必要です。従業員を使用する事業者などが、従業員を使用しない個人などとの6か月以上にわたる業務委託(継続的業務委託)を途中で解除するとき、又は期間が満了しても更新しないときは、終了の日の30日以上前にタレントへ予告しなければなりません(フリーランス法16条1項・13条1項、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令3条)。ただし、災害などのやむを得ない事由で予告ができない場合など、厚生労働省令が定める場面は例外です(同項ただし書)。また、予告から契約の終了までの間にタレントが解除の理由を尋ねたときは、事務所は遅滞なく理由を示さなければなりません(同条2項)。

マネジメント契約の中には、事務所は解除の理由を明示する義務を負わない、と定める書式も見られます。しかし、フリーランス法の適用がある継続的業務委託では、予告を受けたタレントから求められれば理由を開示しなければならないため(16条2項)、この書き方をそのまま使うことはできません。また、声優VTuberのプロジェクトのレビューでも、無催告解除の条とフリーランス法の予告義務との整合を指摘しました。重大な違反による即時の解除が必要な場面はありますが、フリーランス法の適用がある契約では、その場面が予告を要しない場合に当たるかを確かめたうえで条文を作ります。ライバー事務所の改訂版では、期間と解約の条の中に、フリーランス法16条の予告と理由の開示に従うことを明記しました。

16条の予告は、期間満了の後に更新しない場合にも必要です。自動更新の契約で、事務所が更新しない旨を通知する期限を「満了の60日前」としていれば、30日前の予告の要件はおのずと満たされますが、「満了の2週間前」のように短い期限にしていると、法律の要件を下回ります。また、6か月以上という期間は、契約の更新によって6か月以上継続することになる場合も含みます(同法13条1項)。当初の期間が6か月の契約や、短い期間で更新を重ねる契約でも、通算して6か月以上続いていれば対象になることに注意が必要です。

事務所から契約を終わらせるときの手順(フリーランス法の適用がある場合)

  1. 判断解除又は更新しないことを決め、理由を整理する
  2. 予告少なくとも30日前までに、書面・電子メール等で予告する
  3. 理由の開示タレントから求められたら、遅滞なく理由を開示する
  4. 終了と精算履行中の案件の扱いを決め、確定した報酬を精算する

予告を要しない場合(やむを得ない事由など)に当たるかどうかは、厚生労働省令の定めで確認します。

解除事由と、措置の手続

ライバー事務所の既存の契約書への逐条コメントでは、解除の条について、軽微で是正できる違反は催告してから解除し、重大な違反は催告なしに解除できるという区別を置くこと、事務所の側の重大な違反についてもライバーに解除権を認めることを提案しました。改訂版では、報酬の未払い、許諾の範囲を超えた肖像の利用、違法な配信の要求、ハラスメントを、ライバーが解除できる事由として列挙しています。

解除事由の書き分け(改訂の方向)

区分例手続
是正できる違反報告の遅れ、軽微なガイドライン違反相当の期間を定めて是正を求め、是正されないときに解除
重大な違反(タレント側)法令違反の配信、秘密の漏えい、取引先との直接取引催告なしに解除できる。ただし事実の確認と通知を行う
重大な違反(事務所側)報酬の未払い、許諾の範囲を超えた肖像の利用、違法な配信の要求、ハラスメントタレントは催告なしに解除できる
連絡が取れない一定の期間、連絡に応答しない期間を日数で書き、通知の方法を定める

連絡が取れなくなった場合の解除も、書き方に注意が必要です。個人でVTuberとして活動する方のレビューでは、「長期間」連絡が取れないとき、という書き方について、どの程度の期間を指すのかが不明確だと指摘しました。事務所の書類では、2週間、1か月、10日以上と、日数で書いた例がありました。日数で書くだけでなく、どの連絡手段で何回連絡したか、という手順も決めておくと、急病や家庭の事情で一時的に応答できなかった場合との区別がつきます。

解除に至る前の活動の一時停止についても、ライバー事務所の改訂版では、理由と予定期間を通知し、必要最小限の範囲にとどめ、一時停止と直接関係のない確定済みの報酬の支払を不当に留保してはならない、と定めました。措置の手続の考え方は諾否の自由と配信ノルマのページで詳しく扱っています。

不可抗力と、急病・事故による不出演

芸能プロダクションの所属契約書では、天災などの不可抗力が30日間続いたときは契約を解除でき、その場合は履行の割合に応じて報酬を支払い、追加の違約金は生じない、と定めました。タレント業務委託基本契約書では、急病や事故でタレントが出演できなかった場合は、その案件の報酬は支払わないが、違約金も生じない、としています。

この二つの条は、誰も悪くない事情で仕事ができなかったとき、損失をどう分けるかを決めるものです。タレントの急病は、取引先から見れば出演がなくなったという結果は同じでも、タレントに責任を負わせるのは酷です。報酬が発生しない代わりに違約金も生じない、と書いておけば、タレントは体調を崩したときに無理をせずに済み、事務所も取引先への説明がしやすくなります。不可抗力(天災、戦争、感染症の流行など、当事者の支配の及ばない事情)による中止と、タレント個人の急病・事故による不出演とでは、取引先との関係で生じる問題も違います。契約書では、両者を別の事由として書き分け、それぞれの報酬・違約金・取引先への連絡の手順を定めておくと、いざというときに迷いません。

ヒヤリングの問いと理由 期間と解除で決めること

  1. 当初の期間を何年にするか。更新の期間を当初と同じにするか、短くするか。

    育成にかかる期間と、更新を重ねたタレントの拘束の釣り合いを考えます。指針は、更新後の期間を短くする例を参考例に挙げています。

  2. タレントからの中途解約を認めるか。予告期間を何日にするか。

    解約の道がない契約は、民法651条や公序良俗との関係で争われます。予告期間は双方で同じにするのが基本です。

  3. 連絡が取れないときの解除を、何日、どの手段で判断するか。

    日数と連絡の手順を決めておくと、一時的な不応答との区別がつきます。

  4. 急病・事故で出演できなかったときの報酬と違約金をどうするか。

    報酬なし・違約金なしとするか、準備の実費だけを精算するかを決めます。

契約期間と解除で起きがちなこと

よくあるご質問

自動更新を止めるには、いつまでに言えばよいですか?

契約書の「更新しない旨の通知」の期限によります。事務所の書類では、満了の1か月前から6か月前まで幅がありました。期限を過ぎると自動的に更新されるため、締結の時点で期限と通知の方法(書面か、電子メールでよいか)を確認しておくことが大切です。

オーディションに受かったら、契約が延びるのですか?

延長の条があれば延びます。事務所が作成した所属契約書では、所属中にエントリーしたオーディションに合格して出演が決まった場合、満了日を超えても、その公演などの全日程が終わるまで所属を続けると定めました。延長は特定の公演の終了までで、他の活動には及ばないと書き分けておくのが望ましい形です。

途中で辞めたいときは、何か月前に言えばよいですか?

契約書の中途解約の条によります。6か月前の予告を求める契約もありますが、民法651条や90条との関係で、長すぎる予告期間は効力を争われるリスクがあります。事務所の改訂例では、双方とも30日前の通知で解約でき、履行中の案件はその終了まで契約に従う、としました。

連絡が取れないと、すぐに解除されるのですか?

契約の書き方しだいです。「長期間」という曖昧な書き方では、どの程度で解除されるかが分かりません。事務所の書類では、2週間、1か月、10日以上と日数で定めた例がありました。日数に加えて、どの手段で何回連絡したかという手順を決めておくと、急病などとの区別がつきます。

事務所から一方的に契約を打ち切られることはありますか?

契約に解除や更新拒絶の定めがあれば、その条件で終了します。ただし、事務所が従業員を使用し、タレントが従業員を使用しない個人であるなど、フリーランス法の適用がある6か月以上の継続的業務委託では、原則として30日前までの予告が必要で、求めれば理由を開示してもらえます(フリーランス法16条)。

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